現場主導でBIM活用・内装プレカットを積極的に導入【木内建設株式会社】
~現場での達成感を若手にも感じてもらいたい~
1921年に静岡で創業し、2021年に創業100周年を迎えた木内建設株式会社。静岡県内では工事件数トップクラスを誇り、首都圏においては集合住宅を中心に、また中京圏では集合住宅、病院、倉庫、公共施設等、幅広い実績があります。近年では建設工事のDX化に積極的に取り組んでいます。現場レベルでのDXツール導入はどのように進んでいるのか?今回は2023年末にいち早くBuildApp(ビルドアップ)内装のプレカットサービスを自身の現場で導入した雛田安紀様にお話を伺いました。
木内建設株式会社
東京本店 建築部 副部長 兼 第三統括課長
雛田 安紀 様
【目次】
長年抱えていた石膏ボード廃材への疑問
木内建設へ入社して以来、30年以上現場畑を歩んでいますが、石膏ボードの廃材については長年疑問を抱えていました。どの現場でも必ず使う石膏ボードは使用量も多いですが、ロス(廃材)もとても多かったのです。現場寸法に合わせてカットすると、使い回せない分が出てきます。「え、それを捨ててしまうの。」と思うくらいにロスが出る時もあります。もったいないし、近年のエコやSDGsの観点からもどうにかしたいと思っていました。ただ、問題意識はあるものの、どうやって解決するかまでの発想には至っていませんでした。
コロナ禍が後押しした建設DX
一方の別の話として、現場レベルでは近年、様々なDXツールを導入し始めていました。そして、コロナ禍となりました。自分自身としても業界としてもDXを加速させたのはコロナ禍の影響が大きかったと思います。あのパンデミックの中、外出自粛や在宅勤務が呼びかけられながらも、現場の工事を止めることはありませんでした。ゼネコン内部でも内勤、設計、営業などは比較的スムーズに在宅勤務などに移行しましたが、現場は止められなかったのです。
自社職員や工事業者の健康や安全、距離に留意しつつ、それまで顔を突き合わせてやっていた定例会議をオンライン会議に切り替えたりしました。その他、DX化できることはさまざまに検討しました。コロナは命にかかわるリスクもあると報道される中、ある意味毎日命がけで現場に通い、DXの必要性を肌で感じ、効率化を考えました。
石膏ボード廃材をDXが解決してくれる
展示会で出会った瞬間、後光が差して見えたBuildApp内装
以来、工事を効率化してくれるDXツールを積極的に探すようになりました。会社としての動きとは別に自分自身でもアンテナを張り、人に話を聞いたり、調べたりするようになりました。その中で、実際に導入し成果を上げられるツールも出てきました。仕上げ検査ツールやコンクリート打設の調整業務支援ツールなどです。
そんな中、東京ビッグサイトで開催された「建設DX展 東京」で、野原グループ株式会社のBuildApp(ビルドアップ)と出会いました。なにげなく会場を歩いている中で、ブースを見つけて、衝撃を受けました。
「建材パーツレベルまで詳細化したBIMデータを基に、加工寸法・数量といったプレカット情報を出力。これにより、プレカットを積極的に活用でき、施工時間短縮・廃材削減・CO2削減が実現できる。」 野原グループ BuildApp内装のHPより抜粋
このプレカットの考え方は長年抱えていた石膏ボード廃材の問題をDXで解決してくれると直感しました。大げさに聞こえるかもしれませんが、後光が差して見えるほど、魅力的に見えました。ブースで詳しく話を聞いて、さらに共感できるものだと思いました。
導入にあたっての会社への説明と工夫
導入にあたっては会社への説明は工夫しました。折しも、会社が100周年を機に新しい100年へ向けてDXをより推進していたことは後押しになりました。ただ、会社もやみくもにツールを導入するわけではなく、成果が出る見込みのあるものかという見極めがあります。
会社に対しては導入前にプレゼンをしました。最初から興味を示してくれる人は多くはありませんでした。あとは丁寧に継続して説明をしました。私が意識的に会社に説明をしたのは、「結果を求められているが、今までにやったことがないことなので、目に見える成果が出るという意味でも結果」「逆に、上手くいかなかったという意味の経験値という意味でも結果」になるということでした。いずれにせよ何かしらの答えがでるから○か✕かの二元論ではなく、いいも悪いもあらゆる結果を成果として会社はとらえてください、とプレゼンしました。
会社はウエルカムで導入決定 若手へのものづくりの継承
結果、会社は私のような社歴の長い人間がDXに動き出すことを好意的に受け止めてくれました。予想以上のウエルカム状態でした。それはそれで期待されすぎると困ってしまうのですが(笑)。
一方で社内の若手が「あんな前向きな人がいるなら俺たちもやってみよう」と思えれば、それはうれしいなと思っています。
私が若手に継承したいと思っているのはものづくりの精神です。日本のゼネコンの高い建設技術。それはもっと言うと、完成まではチームで絶対にやりきる、という泥臭い精神だと思っています。工事中は本当に色々大変なことが起こります。でも完成すれば素直にうれしい。足場の外れた建物を一日中眺めていられるくらいです。私はよく山登りに例えるのですが、完成という頂上を目指して登る途中は本当に険しい。予期せぬトラブルもよく起こります。諦めて、下山したくなる時もあるけれど、そこを耐えて登り切った頂上(完成)で見える景色は、本当に素晴らしいです。30年以上、何件も物件を経験してきたけれど、完成するごとに自分自身の達成感や会社として新しい知見があります。
その泥臭い精神や知見、技術はコアとして未来へしっかりと受け継いでいきつつ、効率化できる部分、外堀をDXにサポートしてもらうイメージが身の丈に合ってバランスがいいと思っています。
BuildApp(ビルドアップ)内装プレカットサービスの導入計画
第一弾の実証的導入を都内のマンション現場で進めています(※3)。20階超のマンションの住戸内内装の石膏ボード取り付けについて、プレカット施工を実施します。BIMデータからの石膏ボードプレカットデータの割り出し→工場でのプレカット→現場での取り付けを、メーカーや工事店と連携しながら進めています。
引き続き、従来よりも廃棄材料の残置、回収の軽減、CO2削減への取り組みなどで成果を出せるかを見極めていきたいと考えています。
※3 2024年3月取材当時
野原グループ 営業担当より
野原グループ株式会社 建設DX推進統括部 企画営業部 宇野
雛田さんとお会いしたのは、2022年末のDX展にご来場を頂いたお客様へのフォロー訪問でした。初めてお会いした時から現場での課題や将来の展望、建築業界に関わるご自身の想いを熱く語って頂いた事を今でも鮮明に覚えております。
私が思う雛田さんの特徴はインタビューでも表れている通り、熱い想いを語るだけでは無く、非常に冷静に建設現場の現実を見ておられるところです。小さな課題をひとずつ丁寧にピックアップした上で解決の可能性を見極め、対応を模索しておられるのがとても印象的です。
また、雛田さんは“日本のゼネコンのノウハウをしっかりと引き継ぐ“というテーマを言葉だけの綺麗ごとではなく、自ら体現されています。日々、後輩や工事関係者に対して熱い想いで語りかけ、寄り添いながら仕事をされているので、その姿には心打たれるものがあります。
将来を目指して前に進もうとする雛田さんをはじめ、木内建設株式会社様のお役にたてるようにお手伝いをさせて頂きます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
▶ BuildAppのWebサイトでは、サービスのデモ動画を配信しております。ぜひ、ご覧ください。
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