BIM LOD(Level of Development)とは?100~500レベルの違いと建設現場での活用法

【目次】
BIM活用と情報精度の重要性
建設業界ではBIM(Building Information Modeling)の普及が進み、設計から施工、維持管理までをつなぐ情報基盤としての役割が拡大しています。しかし、その活用にあたって大きな課題となるのが「情報精度のバラつき」です。国土交通省や日本建設業連合会(日建連)の指針によれば、BIMモデルの詳細度(LOD:Level of Development)が統一されていない場合、図面やモデルの解釈が人によって異なり、施工段階で干渉や不整合が発生しやすいとされています【1】【2】。
現場の担当者からは「BIMモデルはあるが、どこまで詳細に作成すべきかわからない」「部署によってモデル精度が異なり、確認に時間がかかる」といった課題があります。こうした精度の不一致は、部材の加工や取り付けをやり直す原因となり、工期延長やコスト増につながる場合があります。
建設プロジェクトにおいては、設計品質や施工効率が顧客満足や事業収益を大きく左右します。そのため、LODを活用した情報精度の統一は、単なる技術的ルールにとどまらず、プロジェクト成功に不可欠な要素の一つといえるのです。本記事では、BIM LODの基礎知識からメリット、実務での活用方法までを整理し、現場課題の解決につながる視点を提示します。
BIM LODの基礎|定義とレベル(LOD100~500)の概要
BIM LOD(Level of Development)は、BIMモデルに含まれる情報の詳細度や確定度を段階的に定義した基準です。国土交通省のガイドラインでも、LOD100から500までの5段階で整理されており、プロジェクトの進行段階に応じて必要な精度を設定することが推奨されています【1】【2】。
・LOD100(概念設計レベル) 建物の位置や大まかなボリュームを示す概略モデル。企画段階での配置計画や建物規模の検討に用いられます。
・LOD200(基本設計レベル) 構造や主要部材の種類・おおよその形状が把握できる段階。基本設計での全体構成や概算見積、建物ボリューム比較に活用されます。
・LOD300(詳細設計レベル) 寸法や外形を正確に表現し、干渉チェックや施工検討が可能。設計部門と施工部門がモデルを共有し、施工性を事前に確認できます。
・LOD350(施工準備レベル/海外基準) 日本基準では明記されていませんが、BIM Forumなど海外規格で用いられ、LOD300と400の中間段階として、接合部や納まり詳細を調整する段階として定義されることがあります。
・LOD400(施工・製作レベル) 配筋詳細や接合部の仕様まで含む施工図レベルの情報をモデル化。鉄骨や配管などの製作・施工準備に活用可能です。
・LOD500(竣工・維持管理レベル) 完成時の現況を忠実に反映する段階。維持管理や改修計画の基礎情報として長期的に利用されます。
重要なのは「どの段階でどのLODが必要か」を明確にすることです。例えば、企画段階でLOD400を作り込むと過剰な負担となり、逆に施工段階でLOD200のままでは干渉や不整合が発生します。適切なLODの設定は、効率的かつ無駄のないBIM活用の前提条件なのです。
次の章では、このLOD基準を導入することで得られるメリットについて整理します。
LOD基準適用のメリット|情報精度統一・認識共有・手戻り防止
LOD基準を導入することで、建設プロジェクトに関わる全ての関係者が得られるメリットは大きく3つに整理できます。
1.情報精度の統一による効率化
構造・設備・建築の各部門が同じLODレベルでモデルを作成すれば、干渉の有無や施工性を事前に把握できます。例えば鉄骨と配管の取り合いをLOD300で統一して確認すれば、施工段階での調整作業を大幅に減らせます。情報精度が揃うことで、確認作業を従来の半分程度に短縮し、設計精度の向上が実現します。
2.認識共有の強化による誤解防止
設計者・施工者・発注者が同じLODレベルを参照して議論できるため、仕様の確定度が明確になります。「この部分は概略レベルなのか、詳細まで確定しているのか」が一目で分かることで、解釈の違いによる誤解や再確認作業を防げます。その結果、意思決定のスピードが向上し、関係者間のコミュニケーションが格段に円滑になります。
3.手戻り防止による工期・コスト削減
部材寸法や詳細仕様を適切なLODで定義しておけば、施工段階での加工ミスや再施工を抑制できます。日本建設業連合会の調査でも、情報の一元化が不十分な場合に手戻りが多発し、工期やコストに大きな影響を与えることが指摘されています【3】。LOD基準の活用は、こうした無駄を未然に防ぐ実効性のある方法といえます。
これらのメリットは単なる効率化にとどまらず、プロジェクト全体の品質向上と競争力強化につながるものです。しかし実際の現場では、LOD基準の導入にあたって様々な課題も存在します。次章では、こうした課題と解決策を整理します。
現場課題と解決策|属人化・標準化不足からLOD適用で改善
多くの建設現場では、部門や担当者ごとにLOD設定がバラバラで、深刻な精度の不一致が発生しています。例として、構造部門がLOD300で詳細にモデル化した一方、設備部門がLOD200の概略レベルで進めた結果、施工段階になって初めて配管と梁の干渉が発覚し、急遽設計変更と部材の再手配が必要になるリスクがあります。結果として工期が延び、コストも増大する悪循環につながります。
この背景には「経験と勘」に依存する属人的な判断があります。ベテランが「この程度の精度で十分」と独自の基準で進めてしまうため、組織全体の統一が図れず、部門間のモデル品質に差が生じてしまうのです。
こうした課題を解決するためには、LODを基盤にした標準化が有効です。具体的には次の3つのステップが有効とされています。
1.BEP(BIM実行計画書)の策定
プロジェクト初期にBEPを作成し、各段階・各部門のLOD基準を明確に定義します。これにより「誰が、どの段階で、どのLODまで作成するか」が共有され、作業のばらつきが防止されます。
2.段階的なLOD運用
基本設計はLOD200、実施設計はLOD300、施工図はLOD400といったように、各フェーズに応じた詳細度を段階的に設定することで、必要十分な情報を効率的に管理できます。
3.定期的な整合性チェック
設計・施工の節目でLOD適合状況を確認し、部門間の精度差を早期に発見・是正します。これにより「気づいた時には手遅れ」という状況を防げます。
LODを前提とした標準化を進めることで、属人性を排除し、誰もが同じ基準でモデルを作成・利用できる体制を構築できます。
運用ポイントと注意点|ルール化・定期レビュー・過度な詳細化回避
LOD基準は導入しただけでは意味がなく、運用方法を工夫することで初めて実効性が高まります。ここでは、現場での実践において特に重要となる3つのポイントを整理します。
1.BEPへの明記とルール化
LODレベルの適用範囲や判定基準をBEP(BIM実行計画書)に明確に定義し、関係者がいつでも参照できる状態にすることが必要です。「誰が、どの段階で、どのLODまで作成するのか」を文書化し、プロジェクト開始時点で合意形成を図ることで、作業のばらつきを防げます。
2.定期的なレビューと改善
設計や施工の進行に応じて、LODの適用状況を定期的にレビューすることが欠かせません。月次のBIM調整会議や設計審査の節目で各部門のモデル精度を確認すれば、不整合を早期に発見し、是正することが可能です。
3.過度な詳細化の回避
国土交通省のガイドラインでも「むやみに詳細度をあげる必要はない」と記載されています【1】。必要以上に詳細なモデルは作業負荷やデータ量を増やし、かえって効率を下げる恐れがあります。目的に応じた適切な精度を見極めることが重要です。
これらのポイントを踏まえて運用を継続することで、LOD基準の形骸化を防ぎ、プロジェクト全体に確実な効果をもたらすことができます。次章では、LOD基準を活用することで実現できる品質維持と効率化の両立についてまとめます。
まとめ|LOD基準で品質維持と効率化を両立
BIM LODは、建設プロジェクトにおける「情報精度の統一基準」として、品質向上と効率化を同時に実現する強力な手法です。設計段階から施工、そして維持管理に至るまで、段階ごとに適切なLODを設定することで、必要十分な情報を過不足なく扱うことが可能になります。
過度な作り込みや精度不足を避け、必要な段階で必要な情報を定義することは、工期の遅延や手戻りを防ぎ、プロジェクト全体の信頼性を高めます。LOD基準の活用は、目先の負担軽減にとどまらず、長期的な品質確保とコスト削減を実現する戦略的投資なのです【1】【2】。
今後の建設DXにおいては、LOD基準を活用した情報精度の管理が成功のカギとなります。
弊社が提供している「BuildApp 内装 建材数量・手配サービス」は、生産設計BIMモデルを起点とし、必要な情報処理を行ったうえで正確な建材の所要数量を算出しています。LODを不必要にあげることはせず、従来通りの生産設計BIMモデルがあれば、施工に直結する情報として活用できるよう支援するサービスです。
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出典一覧
【1】国土交通省 関東地方整備局「BIM/CIM(3次元モデル)の基礎知識」(2024年3月)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000879956.pdf
【2】国土交通省「BIM/CIM活用ガイドライン(案)第1編 共通編」(2022年3月)
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001472848.pdf
【3】日本建設業連合会「設計BIMモデル作成ガイド(第1版)」(2024年6月)
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/seminar/pdf/report/2024/jfcc2024_c.pdf
【4】BIMForum(USA)「Level of Development (LOD) Specification」
https://bimforum.org/resource/lod-level-of-development-lod-specification/