内装BIMプレカット実証で施工効率アップを体感【株式会社熊谷組】
株式会社熊谷組は1898年の設立以来、日本有数のゼネコンとして長い歴史を持ち、特に土木工事や建築工事の分野で高い技術力を誇ります。トンネル、ダム、橋梁などのインフラ整備や大型建築物の設計・施工を得意とし、国内外で数多くの実績を残しています。
今回は2024年にBuildApp(ビルドアップ)内装のプレカットサービスを実証導入した、作業所長 梶山和之様にお話を伺いました。
株式会社熊谷組
東京建築支店 建築事業部建築部(第1工事部)
作業所長
梶山 和之 様
【目次】
トップダウンでのDX推進も自分事としてとらえる
野原グループ株式会社のBuildAppを知ったのは、本社の生産BIM推進グループからの紹介でした。特に、BuildApp内装のプレカットサービス(以下、プレカットサービス)については、長年の課題(石膏ボードの残材や現場でのCO2削減など)と合致したためすぐに興味を持ちました。
しばらくして、私の現場でプレカットサービスを実証実験的に導入することが決定しました。形式上は本社からのトップダウンではありましたが、実際の運用は現場に委ねられていました。
私は、入社以来30年近く建設現場に携わっています。仕事に対してはいつも「やらされている感」にならないように心がけています。たとえトップダウンだとしても、自分事としてとらえて、現場の所長として前向きに取り組むことでこれからの建設業界へ少しでも貢献できれば幸いと思っています。
今回の実証実験に対してはたとえ難しい結果になったとしても、次の機会で今回の反省を生かして取り組めればよい、という気持ちでのぞみました。
実証実験として挑戦と再挑戦の機会をつくり、成功に導く
プレカットサービスの“実証実験”とはいうものの、やるからには成功させたいという思いで始めました。今回の物件はオフィスで基準階が2~10階まであったので、そのうち2フロアを実証実験フロアと位置付けました。それ以外のフロアは従来工法での対応としました。
具体的には5階を「挑戦フロア」、9階を「再挑戦フロア」と設定しました。
「挑戦フロア」は見えてないもの、計画が悪いものを見える化させるフロア、「再挑戦フロア」は、「挑戦フロア」の失敗を成功に、計画が悪いものの見直しフロアという位置付けとしました。
あえて2度の挑戦機会(施工フロア)を用意し、成功のために挽回する時間をつくり、策を練ることで現場職員たちが前向きに取り組めると考えたのです。
これによって試行錯誤を重ねたうえで成功体験が積めて、努力が報われる楽しさを得られます。職員1人1人の人間を育てることのみならず、会社としても成功へのさまざまな考察を得られることになり、DXの実証実験としての価値がより高まると思いました。
プレカットは現場の施工効率アップ、残材量・CO2を減らすと確信
実際に実証実験を終えて、やはりプレカットはもっとやるべきだと感じました。数値で見ても、現場でのボード取り付け関連の作業工数は約半分に減り、施工効率性は約2倍に上がりました。プレカットしたボードを現場に搬入するため、現場での残材量・CO2は減りました。
環境問題であるCO2削減は必要不可欠です。CO2削減を考えない企業は、衰退していくと思われます。そういった意味でプレカットは今後、多方に広めていくべき必要なアイテムの1つだと実感しました。
プレカットに向いている建物用途や部位を理解し運用
これは当初の予想通りでしたが、実証実験で得た気づきとしてはプレカットに向いている建物用途や部位についての知見が深まったことです。
全ての建物用途(オフィス、マンション、病院など)で杓子定規にプレカットがつかえるわけではなさそうだということです。
例えば、マンションの耐火遮音壁やファミリータイプの壁面ではより活かせる。逆に、ワンルームのような住戸が小さく、その数が多い物件では逆にプレカットのボードの種類が増え、現場での材料置き場や寸法の精度面で苦労することが想定されました。
実際、今回の挑戦フロアでは小さい壁の採寸ミスで取り付け時にサイズが合わない事態が起きました。また細かい壁のプレカットが多く、現場での荷揚げや間配りに予想以上に時間を割いてしまったこともありました。
こうしたことを踏まえて、プレカットには適切な建物用途や部位があることが理解できました(※1)。
いい意味で今後はプレカットサービスの適用を取捨選択することが大事だと気づきました。
特に当社にて大臣認定を取得した環境配慮型λ-WOODⅡとの連携はプレカット効果を最大限に発揮できるものと考えております。
※1 BuildApp内装では、施工、荷揚げ、間配りの効率性を考慮した、適切なプレカットのご提案が可能です。
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どのようなDXが正しいかは究極的には現場や作業所長によって違う
野原グループ株式会社のBuildAppに限らず、最近は多種多様なDXが生まれては各現場で採用されています。
どのDXを取り入れるかはゼネコンによっても違い、究極的には現場によってあるいは作業所長によって違うと思っています。建築物がどれ一つとして同じものがないように、現場にフィットするDXも現場ごとに個性があっていいのではないでしょうか。
何に問題意識を持ち、どのようなDXで解決するかは、各現場の所長の個性なのだ、と言える時代が来るかもしれません。
建設業界や各ゼネコンが目先の結果にとらわれずに、5年、10年先を見据えて、失敗を積んで成功に導くという気持ちと体力でDXに取り組めば、DXはもっと広がり、これからの建設業界に必要不可欠なアイテムだと考えております。
【野原グループ株式会社 営業担当 宇野からのコメント】
梶山所長にお尋ねした事がありました。BIM(3次元モデル)のどこに可能性を感じているのか?すかさず“可視化”であるとお答えになりました。
従来の施工管理者は頭の中で3次元モデルを連想し、躯体と設備配管の干渉チェックや納まりの整合性を判断し、すみやかに不具合箇所を発見・修正しています。
2次元の図面から不具合を抽出することは若手社員には難易度の高い業務となりますが、BIMツールを使って3次元モデルを描画・可視化する事により、若手社員でも同様に業務を遂行する事が可能になります。
本来であれば一定の経験年数を経て遂行できる“干渉チェック”や“納まり確認”といった業務を若手社員が易々とこなして、次の段階に進む(不具合を自分で解決する技術を身に付けていく)姿をご覧になり、目を細めておられました。
梶山所長は仰いました。BIM(3次元モデル)の活用が、人手の限られる作業所において業務の効率化と若手社員の成長のスピードアップにつながっていると。
ご自身の経験や身に付けたスキルに拘る事無く、次世代に何を伝えるべきか?何が必要なのか?冷静に判断されて指導にあたられている姿は本物の技術者が持つ矜持を感じた次第です。
今回、実証実験にご協力をいただいた「BuildApp内装」のサービスについてご紹介しています。
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#1.ゼネコン現場でのDX推進と組織マネジメント|株式会社熊谷組 作業所長へ独自インタビューは、
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